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水曜日, 7月 13, 2016

学生フォーミュラの組織論(プレゼン)


学生フォーミュラの組織論 from Yuya Yamada




  1. 1. 学生フォーミュラの組織論 久留米工業高等専門学校 ロボコン部 OB 豊橋技術科学大学 自動車研究部 OB ㈱アドバンテスト 山田 祐也
  2. 2. POWERED BY YAMADA 2 やまだゆうやのガイドライン n  名前:山田祐也(26) n  職業:サラリーマンエンジニア2年生 n  趣味:車、バイク、チャリンコ、ジョギング n  経歴 n  久留米工業高等学校 機械工学科 n  ロボコン部 (チームリーダ、部長) n  豊橋技術科学大学 機械システム工学科 n  自動車研究部 (テクニカルディレクタ) n  株式会社TCI (SE,PG) n  ロボコン部 (仮部員?) n  Team SBR (幽霊部員)  1.  5つの部活を創り、10個の部活に入った経験あり。 2.  ものづくりコンペティションがわりと好き。 REMARK
  3. 3. POWERED BY YAMADA Keyword n  士気混在許容組織 n  エースプレーヤー取り扱い説明書 n  士気が低い部員をどう扱うか。 ~部活で怠惰は悪なのか~ n  モチベーションエンジニアリング n  モチベーションを創造する仕掛け作り n  モチベーションをマネジメントする n  誰がために目標を設定するのか? n  目標って何だ? n  その目標、根拠ありますか? n  下方修正を恐れるな! n  教科書に書いていない「開発」のコツ n  設計≠開発 n  技術伝承とデータベースの重要性 n  思いついても形にならないのは何故だろう?
  4. 4. POWERED BY YAMADA 1.部活術への誘い n  目的:ディスカッション慣れしてほしい n  メッセージ1:目標管理は大切ですよ(`・ω・´) n  メッセージ2:部活は楽しむもの(^ω^)
  5. 5. POWERED BY YAMADA ビジネス本が通用しないF-SAE n  【理由】F-SAEに必要なのは。。。 n  仕事術 n  部活術 n  【テーマ】仕事と部活の共通点、異なる点を2つづつ挙げてみよう。 ü まず役割分担(リーダ、書記、タイムキーパ、発表者) ü ゴール設定を明確にする ü 発散系(ブレスト)、収束系(ディスカッション)、報告を明確に分ける。 ü 発表は結論を先、続いて根拠を説明する ü どんなに素晴らしい結論を導こうと、時間オーバーに価値は無い ü 【提案】画用紙上でマインドマップを活用してみてください。 会議のコツ
  6. 6. POWERED BY YAMADA マインドマップ活用例① n  議事録 アイディアや情報を視覚的に把握、整理、および優先付けする
  7. 7. POWERED BY YAMADA マインドマップ活用例② n  組織図 アイディアや情報を視覚的に把握、整理、および優先付けする
  8. 8. POWERED BY YAMADA マインドマップ活用例③ n  プロジェクト進捗管理 アイディアや情報を視覚的に把握、整理、および優先付けする
  9. 9. POWERED BY YAMADA マインドマップ活用例④ n  TODO LIST 作成 アイディアや情報を視覚的に把握、整理、および優先付けする
  10. 10. POWERED BY YAMADA マインドマップ活用例⑤ n  フォーミュラカーの仕様策定
  11. 11. POWERED BY YAMADA マインドマップを活用しなかった例 n  就職の面接対策 ~箇条書きで表現する自分の個性~ n  長所 n  好奇心旺盛かな? n  行動力がある。 n  コミュニケーション能力に長ける n  短所 n  飽きっぽい。口癖が「めんどくさい」 n  集中力が無い。興味が無いと続かない。 n  得意教科 n  数学 n  物理 n  力学 n  不得意教科 n  国語 n  英語 n  ボキャブラリー 箇条書きって、階層構造が分かりにくいし、見辛いよね。僕は嫌いだ
  12. 12. POWERED BY YAMADA マインドマップでまとめた例 n  面接で喋る内容のまとめ方 ~マインドマップ活用術~ アイディアや情報を視覚的に把握、整理、および優先付けする
  13. 13. POWERED BY YAMADA 情報の整理のコツ n  階層化/構造化 n  例)PCのファイルシステム n  紙ベースでも可能 n  情報量が多いと紙では無理 n  データ、アルゴリズム双方に有効 n  ネットワーク化/ハイパーリンク n  例)PCのショートカット、グーグル先生 n  例)本のしおり n  紙ベースでは無理 n  強力だけどたまに迷子になる n  データベース化 n  例)ファイルにインデックスを付ける n  情報量が多いと紙ベースだとかなり難しい。 n  計算機ベースだと実装及び運用がめんうどくさいけど強力 情報を整理する時は常に上記3点のどれに類するか、意識すべし! マインドマップが カバーする領域
  14. 14. POWERED BY YAMADA さぁ、議論を楽しもう。 n  今回のルール n  議論10分、発表1分、質疑応答1分 ü まず役割分担(リーダ、書記二人、タイムキーパ、発表者) ü ゴール設定を明確にする ü 発散系(ブレスト)、収束系(ディスカッション)、報告を明確に分け、  適切なメンバー数にする。 ü 発表は結論を先、続いて根拠を説明する ü どんなに素晴らしい結論を導こうと、時間オーバーに価値は無い。  君の一時間は幾らの価値がある? ü 【提案】画用紙上でマインドマップを活用してみてください。 会議のコツ 【テーマ】仕事と部活の共通点、異なる点を2つづつ挙げよ!
  15. 15. POWERED BY YAMADA ビジネス本が通用しないF-SAE n  【理由】F-SAEに必要なのは。。。 n  仕事術 n  部活術 n  回答例 ü  仕事には報酬がある。契約に基づいて進行する。 ü  部活は無賃金無報酬。契約に曖昧な部分が多い ü ビジネス本に書いてない部活術のヒントを掴もう。 ü 部活と仕事の違いを掴もう。そしてこの活動を将来に繋げよう。 今日のテーマ 【テーマ】仕事と部活の共通点、異なる点を2つづつ挙げよ!
  16. 16. POWERED BY YAMADA F-SAEと仕事をリンク n  FSAE経験で仕事に応用が利く例その1 ü ものづくりの上流から下流まで横断的に経験できた。 Ø 前後の工程を意識したものづくりが可能に! FSAEの財産     FSAE活動 個人の裁量は とても大きい ü 徹底した分業と特化 ü 個人の裁量は小さい 企業活動  企画  営業  設計  解析  製作  評価 Aさん  Bさん  Cさん 設計 解析 実験 密接に リンク 企画 営業 設計 解析 評価 製作
  17. 17. POWERED BY YAMADA FSAEと仕事をリンク n  FSAE経験で仕事に応用が利く例その2 経験に裏打ちされた自信 知識から体得へ!! 技術力 営業力 プロジェクト マネジメント プレゼン力
  18. 18. POWERED BY YAMADA 社会人になって得た仕事術 n  仕事が出来る≠仕事が楽しい 仕事術 ü  思考のフレームワーク ü  目標設定、スケジューリング ü  etc… ü  各種自動化、データベース化 システム化で余計な思考 を遮断して生産性向上 n 生産性は上がるけど、楽しくなくなるかも? n どうせビジネス本にいくらでも書いてある n どうせ社会人になったら嫌でも学ぶ ☆楽しむ事を最重要視するF-SAEと相性悪い 教えてあげない(^ω^)
  19. 19. POWERED BY YAMADA 部活は楽しむもの n  楽しむために勝つ、そのために頑張る(普遍的な解ではない n  勝つために頑張る(駄目じゃないけどよろしくない 疲れる デスマーチ 人が去る デスマ加速 加速する負のスパイラル 「自分は何のためにF-SAEを頑張っているのか」 常に上位の目的を意識しよう。→じゃないと突然辞めたくなる。
  20. 20. POWERED BY YAMADA Q)なぜにF-SAEはかくも素敵なのか。 ANSWER 1.  数多くの成功体験と失敗体験を積み重ねることができる。 2.  組織で動く楽しさと難しさを存分に味わえる。 人は失敗から学び、成功で自信を得る 成長 これほど多くの失敗と成功を積み重ねることができるのはものづくり倶楽部だけ。 Q)では、同じF-SAE経験者でも成長速度が違うのは何故だろう?
  21. 21. POWERED BY YAMADA 適切な目標が人を成長へと導く n  【テーマ】君ならどうやってF-SAEの目標を立てる?F-SAEにおいて駄目な 目標設定って何?そして如何にして目標を達成する? n  【ルール】議論10分、発表1分、質疑応答無し ü まず役割分担(リーダ、書記、タイムキーパ、発表者) ü ゴール設定を明確にする ü 発散系(ブレスト)、収束系(ディスカッション)、報告を明確に分け、  適切なメンバー数にする。 ü 発表は結論を先、続いて根拠を説明する ü どんなに素晴らしい結論を導こうと、時間オーバーに価値は無い。  君の一時間は幾らの価値がある? ü 【提案】画用紙上でマインドマップを活用してみてください。 会議のコツ
  22. 22. POWERED BY YAMADA 適切な目標が人を成長へと導く n  目標設定が闇雲 or 下手糞な例(回答例) n  無茶な目標を立てて挫折する ←1番多い例 n  目標を忘れて手段に走る ←好奇心旺盛な奴 n  目標を行動にブレイクダウン出来ない ←初心者に多い n 【テーマ】君ならどうやってF-SAEの目標を立てる?F-SAEにおいて 駄目な目標設定って何?そして如何にして目標を達成する? n 【ルール】議論10分、発表1分、質疑応答無し Point ! n  自分に対する目標設定、部下に与える目標設定、チームとしての目 標設定はそれぞれやり方、難易度が違う n  ミッション遂行のための目標設定とモチベーションコントロールのため の目標設定はちょっと趣が違う n  部活ではモチベーションコントロールに焦点を当てよう 常に部員へ心地良いストレスを提供しよう!
  23. 23. POWERED BY YAMADA 目標設定のヒント ~山田流目標設定術~ n  何回に一回成功するのか n  99回失敗していいのは天才だけ。 [ ] [ ] [ ]失敗体験の数 成功体験の数 困難度 = [ ] [ ] [ ]活動時間 失敗体験の数 人生 =MTBF [ ] [ ] [ ]活動時間 成功体験の数 人生 =MTBS 君は何度挫折したら心が挫けるだろうか? 短期間に失敗が続くと心が折れるよね?「負け癖」に気をつけろ! リーダはここを強く意識すること! ※信頼性工学からのアナロジー、ジョークです n  何日に一回失敗するのか n  何日に一回成功するのか n  部員に1ヶ月に一度は達成感を!
  24. 24. POWERED BY YAMADA そもそも目標って何だ? ANSWER n  「いつまでに」「なにを」成し遂げるか。 超有名な目標管理手法に「ガントチャート」がある。 時間軸が抜けていたら、それは願望に過ぎない What’s GanttChart n  縦軸にタスク、リソース、横軸は時間軸 n  ツール:Excel、 GanttProject
  25. 25. POWERED BY YAMADA GanttChart 構築アルゴリズム n  事務的に淡々とガントチャートを作れるようになろう。 【Step1】タスクとそのデットライン、サブタスク、リソースをリストアップ 【Step2】サブタスク間の依存関係を洗い出し、並列化、シーケンスを組む 【Step3】表に落とす。表が破綻してたらサブタスクのボリューム見直し n  例1)実験したい n  タスク:実験、デットライン:2w n  サブタスク 装置Aの準備(2d)/手配(5d)、装置Bの準備(2d)/手配(5d)、 プログラムの準備(5d)、仮説と理論の整理(10d)、 実験(2d)、データ整理(1d)、レポート作成(2d) n  リソース:一人
  26. 26. POWERED BY YAMADA GanttChart 構築アルゴリズム n  事務的に淡々とガントチャートを作れるようになろう。 【Step1】タスクとそのデットライン、サブタスク、リソースをリストアップ 【Step2】サブタスク間の依存関係を洗い出し、並列化, シーケンスを組む 【Step3】表に落とす。表が破綻してたらサブタスクのボリューム見直し n  例1)実験したい 装置Aの準備 装置Bの準備 プログラムの準備 仮説と理論の整理 実験 データ整理 レポート
  27. 27. POWERED BY YAMADA GanttChart 構築アルゴリズム n  事務的に淡々とガントチャートを作れるようになろう。 【Step1】タスクとそのデットライン、サブタスク、リソースをリストアップ 【Step2】サブタスク間の依存関係を洗い出し、並列化、シーケンスを組む 【Step3】表に落とす。表が破綻してたらサブタスクのボリューム見直し n  例1)実験したい リソース 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 タスク 工数 担当 優先度 D eadLine月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 装置A 2+5d 山田 ☆☆☆ 9 装置B 2+5d 山田 ☆☆☆ 9 PG M 5d 山田 ☆☆ 9 理論整理 10d 山田 ☆ 12 実験 2d 山田 ☆☆☆ 11 データ整理 1d 山田 ☆☆ 12 レポート作成 2d 山田 ☆☆☆ 14
  28. 28. POWERED BY YAMADA GanttChart 構築アルゴリズム n  事務的に淡々とガントチャートを作れるようになろう。 【Step1】タスクとそのデットライン、サブタスク、リソースをリストアップ 【Step2】サブタスク間の依存関係を洗い出し、並列化 【Step3】表に落とす。表が破綻してたらサブタスクのボリューム見直し n  例2)設計したい n  タスク 設計開発(モジュール4点、部品4x5=20点)、デットライン=4w n  サブタスク 検討/仕様策定=5人日/module 設計(モデリング/製図)=2人日、BOM=1day、設計検証=2day n  リソース:CAD x 2ライセンス、3人 リソースのボトルネックであるCADをフル稼働させる Point
  29. 29. POWERED BY YAMADA GanttChart 構築アルゴリズム n  例2)設計したい 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 タスク 工数 担当 C AD D eadLine 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 M odule 1検討 山田 - 21 M odule 2検討 田中 - 21 M odule 3検討 清水 - 21 M odule 4検討 山田 - 21 M odule 5検討 山田 - 21 part1-1 設計 田中 PC 1 25 part1-2 設計 清水 PC 2 25 part1-3 設計 田中 PC 1 25 part1-4 設計 清水 PC 2 25 part2-1 設計 田中 PC 1 25 part2-2 設計 清水 PC 2 25 part2-3 設計 田中 PC 1 25 part2-4 設計 清水 PC 2 25 part3-1 設計 田中 PC 1 25 part3-2 設計 清水 PC 2 25 part3-3 設計 田中 PC 1 25 part3-4 設計 清水 PC 2 25 part4-1 設計 山田 PC 1 25 part4-2 設計 田中 PC 2 25 part4-3 設計 清水 PC 1 25 part4-4 設計 山田 PC 2 25 part5-1 設計 清水 PC 1 25 part5-2 設計 山田 PC 2 25 part5-3 設計 田中 PC 1 25 part5-4 設計 清水 PC 2 25 BO M 山田 - 26 設計検証 田中 - 28 リソース
  30. 30. POWERED BY YAMADA それでもなおスケジューリングできないアナタ(僕)へ。 n  スケジューリングが破綻する一番の原因は 「サブタスクの工数見積もり精度の甘さ」 ※僕も学生時代は何をやるにも自分の工数は見積もれませんでした。(注1)今も。 ü 自分の工数見積もり精度を向上させる努力を継続する(超重要)  仕事に取り掛かった時間と終わった時間を全部メモして絶望しよう ü スケジューリングは常に柔軟に見直すこと。(下方修正を恐れない) ü 死守することと妥協して良いことを最初に分類しておく  (この切り分けが下手でどうでも良いことに工数突っ込む人多い) ü 立てたスケジュールそれ自体に有効期限を設ける  (状況は常に変わる、半年前に立てた目標なぞゴミ以下の臭い) 対策 ※学生に自分の開発工数を見積もることは絶対に無理。 だから、ガントチャートくらいは事務的かつ迅速に作らねばならんのです。 問題
  31. 31. POWERED BY YAMADA それでもなおスケジューリングできないアナタ(僕)へ。 n  学生は1日が24時間あると勘違いしている馬鹿が多い。(注2)僕も n  学生フォーミュラの工数見積もりはdayじゃなくてhour で計算する。 n  自分の工数見積もりより他人の工数見積もりは断然難しい。 当然、組織全体で工数の見通しを立てるのは至難の業 ü 意味不明な楽観視禁止 →「徹夜すればテストまであと10時間あるから楽勝!」→常勝ではない ü 学生フォーミュラに3h/day以上時間を注ぎ込まない「覚悟」を決める。 遊び、勉強、研究などを犠牲にせず年中バランスよく活動し、リズムを作る。 ü マイルストーン管理を併用する ü 考えながら走り、走りながら考える。←バランスが重要 対策 問題
  32. 32. POWERED BY YAMADA 2.組織論 n  これまでのまとめ n  会社と部活は違うから、社会人の言うことをいちいち真に受けるな。 n  目標管理の大切さ 上位の目標を常に見定めながら下位の目標へとブレイクダウンする。 上と下が見えていない人が多いよ。 n  目標=TODO+期限 n  常に目標を修正し続け、精度を上げる。 n  限られた時間で結論を出す訓練を経験してみた n  これからの話 n  自動車会社と自動車部の組織的な違い。 n  会社よりも部活の方が、ややめんどくさい点をご紹介。
  33. 33. POWERED BY YAMADA 部活と仕事の違い ~組織編~ n  理想的組織(みんな士気が高い) n  特に管理する必要は無い ほっとけば才能の無駄遣いと無駄なクオリティー炸裂 立てたスケジュールも勝手に前倒しされる。 現実を直視しろ弱虫!実際にそういう理想的組織は滅多に存在しない。
  34. 34. POWERED BY YAMADA 部活と仕事の違い ~組織編~ n  企業流目標設定 n  【目的】業務遂行 n  【アプローチ】 n  時間当たりのパフォーマンス最適化 n  デットラインから遡るスケジューリング n  【下方修正閾値】 n  社員が倒れない程度に厳しく(ブラック企業除く) n  優先度管理徹底(どうでも良いことは容赦なく先送り) Point ! n  賃金と契約あってこそ成立する手法(部活では無理) n  企業でも士気の個人差はあるから、目標設定は必須
  35. 35. POWERED BY YAMADA 部活と仕事の違い ~組織編~ n  部活流目標設定術 n  【目的】? n  【アプローチ】? n  【下方修正閾値】? n  【テーマ】どのような目標設定がF-SAEに適しているか。 n  【ルール】議論10分、発表1分、質疑応答1分 ü まず役割分担(リーダ、書記、タイムキーパ、発表者) ü ゴール設定を明確にする ü 発散系(ブレスト)、収束系(ディスカッション)、報告を明確に分ける。 ü 発表は結論を先、続いて根拠を説明する ü どんなに素晴らしい結論を導こうと、時間オーバーに価値は無い ü 【提案】画用紙上でマインドマップを活用してみてください。 会議のコツ
  36. 36. POWERED BY YAMADA 部活と仕事の違い ~組織編~ n  部活流目標設定術 (回答例) n  【目的】楽しみながら共に成長する。 n  【アプローチ】 n  モチベーションコントロールを意識する n  簡単過ぎず、難しすぎない挑戦し甲斐ある難易度設定 n  出来るだけ楽しいテーマを選出 n  【下方修正閾値】 n  部員に対して匿名アンケートを実施して満足度調査
  37. 37. POWERED BY YAMADA 士気混在許容組織について n  企業と部活では人材の質のバラつきがまったく違う! n  モチベーションが高い人と低い人の混在した組織の運営は とても難しい。この点は会社運営より大変である。 FSAE活動 企業活動 ü 仕事出来ない奴は給料泥棒 ü エースも居るが、平社員の最 低限能力レベルは意外と高い。 ü 士気のレベルはわりと均一 ü 部活はそもそも「義務」ではない ü 下級生新入部員からエースまで 能力の差が激しい ü 士気のレベルは様々
  38. 38. POWERED BY YAMADA 士気混在許容組織について n  モチベーションの低い人の扱いについて。 →既に各チーム議論が尽くされている(と思われる) 1.  やる気ある人だけ集める →夢は寝て見ろ 2.  やる気無い人をクビにして少数精鋭を目指す →デスマーチに片足突っ込んでますよ 3.  やる気を奮い立たせる仕掛けを考える →それが出来たら苦労しねぇ。 本日の最終議論テーマ 4.  「腐ったミカン」エフェクトを最小限に抑制しつつ、 皆で楽しくワイワイガヤガヤやる。 →個人的には現実的な解。創造力は楽しさから生まれる →F-SAEでは実働部員の数はとても大切
  39. 39. POWERED BY YAMADA 士気混在許容組織について n  エースプレーヤーとは (山田定義) どのものづくり倶楽部にも必ず要となるエースが居る。やる 気に満ちてたり、やたら行動力があったり、めっぽう頭良かっ たり、工学のセンスに卓越してたり。色んなタイプが居るが共 通していることは無駄にクオリティーが高いこと。 n  エースプレーヤーの数:大会成績と強い相関 n  実働部員の数:車検通過率と全種目完走率に直結 n  実はエースの方が取り扱いが難しい。 ここの議論は各チームまだ不十分だと思われる。
  40. 40. POWERED BY YAMADA 士気混在許容組織について n  エースプレーヤー取り扱い説明書 n  天才タイプ 稀にわき道へ逸れ、目的を見失う。突然飽きて居なくなる恐れあり。 n  秀才タイプ 頼りになるが、他人に努力や成果を「強要する」タイプは度が過ぎる と部活を崩壊させる場合もある 注)社会に出ると成功する 能 力 Skill 高 野生のプロ 鼓舞する エース 委任する 低 ムードメーカー 命令する? 次期エース 指導する 低い 高い やる気 will ~部活で人を動かす時に必要なことは 強要ではなく、鼓舞~ 実働部員 ココがキモ 実は大切 Will-Skill Matrix
  41. 41. POWERED BY YAMADA 士気混在許容組織について n  エースは突然居なくなる!! 【理由1】エースに仕事が集中しちゃう →ワークロード平準化はリーダの勤め! 【理由2】やる気無い部員に不満を抱えている場合がある。 →やる気が無い事はそもそも悪なのか? 罪を憎んで人を憎まず。部員に逃げられたら人を恨むのではなく、 モチベーションマネジメントの甘さを再確認しよう。 注)影で一番悩んでいるのもまたエース!皆で支えてあげよう。
  42. 42. POWERED BY YAMADA 人を動かすコツ n  指導者に求められる資質 部員に「やるべきこと」を1伝えるために理由/目的、そして 「アツイ想い」を「自分の言葉」で9語れる人間であること。 n [人を動かす力]=[理屈]×[情熱] u 賃金で縛られる「仕事」 5:5=手順:目的 u やる気を大切にする「部活」 2:8=手順:目的 u 簡単な作業 手順だけでOK  u 難しい作業 目的を伝えないと迷走する。 u 問題解決能力ある奴 目的だけで十分 u 目的より手段に走る人、好奇心で動く人 目的と理由を徹底的に。 配分の目安
  43. 43. POWERED BY YAMADA 3.それでもなお、勝ちにこだわるアナタへ。 n  これまでのまとめ n  リーダーは現状把握と負荷分散、スケジューリングに勤める。 仕事している場合じゃないぞ。 n  エースは気難しい場合がある。エースを手懐けよう! n  心地よい組織を目指そう。 n  これからの話 n  学生フォーミュラ必勝法 n  教科書には書いていない「開発」とは n  システムは自然に形骸化する
  44. 44. POWERED BY YAMADA 無難なマシンを半年前に仕上げて走りこむ。 偉人の格言 モビルスーツの性能の違いが 戦力の決定的差では無いという事を教えてやる。 ☆F-SAE必勝法☆ n  レースで重要なことは 1.  ドライバーの仕上がり 2.  タイヤ 3.  車のセッティング ≠ 車のポテンシャル 4.  その他(マスバランス、W/P ratio、電子制御)
  45. 45. POWERED BY YAMADA 無難なマシンを半年前に仕上げて走りこむ。 偉人の格言 モビルスーツの性能の違いが 戦力の決定的差では無いという事を教えてやる。 ☆F-SAE必勝法☆ n  これはどのチームも理解はしているけど体得していない 「少しでも良いものを作りたい」という「目先の欲」に負け、技術に走り、 発散する例が後を絶たない。「大会までに」良いモノを作れ Message n  シェイクダウン期日だけは死守すること(ここは妥協しない、覚悟を決めろ) n  目標管理はやっぱり大切です。下方修正を恐れるな。 n  車は部品作るよりも、走らせたほうがよっぽど楽しいよ。 n  エンデュランス完走できないチームに「安全性を語る資格無し」
  46. 46. POWERED BY YAMADA 開 発 開 発 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  開発≠設計 設計の教科書はたくさんあるし、授業でも教えてくれるけど、「開発」は誰 も教えてくれない。古典的なウォーターフォールモデルを以下に示す コンセプト決定 要求定義 仕様策定 設計 加工 検証 Feedback 泥 臭 ーー 具 体 的 抽 象 的 ü もっとも大切な原点。一年の成果はここで決定 される。妥協せず考え抜き、合意を得ること! ü INPUT/OUTPUT情報をLIST_UP/整理。コンセ プトを具現化するための「在るべき姿」を決める ü 要求を満たすためのアーキテクチャとそのパ ラーメータを決定。未定パラメタの決定手法決定 ü 仕様をモデルと図面に転写するだけのルーチ ンワークだが、経験が必要とされる。 ü モデルを現物に転写する。経験を必要とする ü 検証方法は仕様策定とセットで予め準備して おくこと(例:テスト駆動開発) これが卒業後の皆の仕事
  47. 47. POWERED BY YAMADA 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  開発≠設計 設計の教科書はたくさんあるし、授業でも教えてくれるけど、「開発」は誰 も教えてくれない。 n  【ヒント】ソフトウエア工学には「開発」のヒントがいっぱい。 【理由】彼らは50年前から常にデスマーチと戦い続けたため、ソフトウエ ア開発手法は機械開発手法の30年飛んで斜め1rad先を突っ走っている。 仕様書の大切さを知りたければSEに聞け! n  CAD/CAM/CAE統合環境や3DプリンタなどRapid Prototyping手法 が整備された今、彼ら(SE,PG)から学ぶことは多い。 n  10年後にはアジャイル「ハードウエア」開発も可能になるかもね。 Point !
  48. 48. POWERED BY YAMADA 開 発 開 発 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  開発≠設計 設計の教科書はたくさんあるし、学校でも教えてくれるけど、「開発」は学 校で教えてくれない。古典的なウォーターフォールモデルを以下に示す コンセプト決定 要求定義 仕様策定 設計 加工 検証 Feedback 泥 臭 ーー 具 体 的 抽 象 的 ü もっとも大切な原点。一年の成果はここで決定 される。妥協せず考え抜き、合意を得ること! ü INPUT/OUTPUT情報をLIST_UP/整理。コンセ プトを具現化するための「在るべき姿」を決める ü 要求を満たすためのアーキテクチャとそのパ ラーメータを決定。未定パラメタの決定手法決定 ü 仕様をモデルと図面に転写するだけのルーチ ンワークだが、経験が必要とされる。 ü モデルを現物に転写する。経験を必要とする ü 検証方法は仕様策定とセットで予め準備して おくこと(例:テスト駆動開発) これが卒業後の皆の仕事
  49. 49. POWERED BY YAMADA 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  【要求定義編】 マーケットイン開発は要求定義がキモ。ユーザーはそもそも 1.  ユーザーは自らが何を欲しているか理解していないことがある。 2.  ユーザーは要求仕様書に関わりたがらないことがある。 3.  ユーザーは既にスケジュールと費用が確定した状態で さらに新たな要求を出してくることがある。 4.  ユーザーとの対話には時間がかかる。 5.  ユーザーはレビューに参加したがらないか、参加できないことがある。 6.  ユーザーは技術に疎い。 7.  ユーザーは開発工程を理解しない。 n  プロダクトアウトではそこまで難しくないけど、重要
  50. 50. POWERED BY YAMADA 開 発 開 発 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  開発≠設計 設計の教科書はたくさんあるし、学校でも教えてくれるけど、「開発」は学 校で教えてくれない。古典的なウォーターフォールモデルを以下に示す コンセプト決定 要求定義 仕様策定 設計 加工 検証 Feedback 泥 臭 ーー 具 体 的 抽 象 的 ü もっとも大切な原点。一年の成果はここで決定 される。妥協せず考え抜き、合意を得ること! ü INPUT/OUTPUT情報をLIST_UP/整理。コンセ プトを具現化するための「在るべき姿」を決める ü 要求を満たすためのアーキテクチャとそのパ ラーメータを決定。未定パラメタの決定手法決定 ü 仕様をモデルと図面に転写するだけのルーチ ンワークだが、経験が必要とされる。 ü モデルを現物に転写する。経験を必要とする ü 検証方法は仕様策定とセットで予め準備して おくこと(例:テスト駆動開発) これが卒業後の皆の仕事
  51. 51. POWERED BY YAMADA 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  【アーキテクチャー構想段階編】 ツール:Must-Want Matrix 1.  コンセプトからMust用件とWant用件を列挙する。 Want用件には優先順位をつける 2.  アイディアを列挙する 3.  横軸にアイディア、縦軸に用件を書いた表(Matrix)を作る 条件 要求 1 2 3 4 5 条件1 M UST ○ ○ ○ ○ × 条件2 M UST × ○ ○ ○ ○ 条件3 M UST ○ ○ ○ × ○ 条件4 ☆☆☆ ○ × × × × 条件5 ☆☆ ○ × ○ × ○ 条件6 ☆ ○ × ○ ○ × アイディア
  52. 52. POWERED BY YAMADA 学校で誰も教えてくれない「開発」 n  設計パラメータ策定編 n  【背景】自動車は複雑系でトレードオフ多数。還元主義は通用しない n  重量と剛性、どっちを優先しようかな? n  重心高さと完成モーメント、どっちを優先しようかな n  【対応策】コンセプトとそれを具体化した「仕様」が堂々巡りを断ち切る! Module A Module A Module A 依存関係 いざ設計を始めても 堂々巡りが始まる
  53. 53. POWERED BY YAMADA 学校で誰も教えてくれない「開発」   n  【背景】自動車は複雑系でトレードオフ多数。還元主義は通用しない n  【対応策】コンセプトとそれを具体化した「仕様」が堂々巡りを断ち切る! n  【手段1】振るパラメータを絞るやり方 1.  パラメータ列挙 (強度、剛性、重量、耐久性、etc) 2.  パラメータ整理 (優先度や次元解析で絞る) 3.  Fixするパラメータを決定(コンセプトより決定) 4.  残りを最適化 (ココからが設計) 例)何かをマウントするブラケット。コンセプトは軽さとコスト。要求は100Nの静荷重 1.  ブラケットのアーキテクチャ決定(板金、削り出し、溶接、等) 2.  肉厚と直径という二つのパラメータを断面係数にまとめる、長さと幅という二つの パラメータをアスペクトレシオという1つのパラメータにまとめる、等 3.  Fixパラメータは強度と安全率(仕様として打ち決めしてしまう) 4.  後は加工性や入手製などを考えながら他のパラメータを振って重量を最小化
  54. 54. POWERED BY YAMADA 学校でコンセプトの大切さ  n  【手段2】目的関数作成で全体最適化 1.  パラメータ列挙/整理 2.  目的関数作成 (コンセプトより重みを決定) 3.  目的関数をシューティング 【感想】無茶苦茶難しいです>< n  【手段3】繰り返し設計(スパイラルモデル)で最適化 ソフトウエアでは常套手段だが機械設計では工数的に夢物語 n  【手段4】田口メソッド(品質工学) 【感想】これまた無茶苦茶難しいです(´・ω・`) ココまでと設計検証方法を仕様書に落とす。これが開発 TODO ※TDは部員に対して何がMUSTで何がWANTかを常に即答できるように。 ※設計や加工、検証の際に迷いがあってはいけない。仕様の詰めが甘い証拠 ☆仕様書無き設計は加工図面無しに旋盤回しているようなもので、戻り工数多大 ☆設計検証(実験)は仕様が無いと合否判定基準すら得られない。
  55. 55. POWERED BY YAMADA 人はなぜ技術継承がめんどくさいのか。 n  技術継承が上手く回っているチームは少ない。 n  皆知ってる(が、形にならない)技術継承のやり方の例 n  人から人への技術伝承(OJT) n  各種合理化システム、過去の設計資産活用データベース、 各種BOM,設計ルーチン書、自動設計ソフト、設計基準所、構想レ ビュー資料、設計レビュー資料、各種チェックシート、マニュアル、失 敗データベース、etc…. Point ! n 探し始めて10分で出てこない資料は資料じゃなくてゴミ。 過去の財産の整理整頓を怠るべからず。 →であれば、データベースが在れば良い(ただしこれは理想論) Q)ところで「なぜ」過去の財産は化石(持ち腐れ)になるのだろうか?
  56. 56. POWERED BY YAMADA やはりめんどくさい技術継承 n  一番悪い例 物だけ作って勝手に満足。財産を何も残してあげない人。注)僕も。 大会後1ヶ月くらいは資料の整理に勤しもう。 n  あと一歩努力が足りない例 合理化システムを作ってみたが、本人しか使わずに部員に定着しない。 n  人間性に多少問題がある例 合理化システムを作った人が作った時点で満足して 「せっかく頑張って作ったのに、何で使ってくれないんだ」 と逆ギレしている。 n  「システムは自然に形骸化する」 ü  技術継承が出来ないチームはエースの卒業と共に弱体化する。 Point ! 意識的に維持する 努力が欠かせない
  57. 57. POWERED BY YAMADA システムは自然に形骸化する n  合理化システム(データベース、自動計算ソフト)の作り方 1.  HOP :システムを考案する。 誰でも出来るし、ビジネス本に実例が書いてある 2.  STEP :システムを形にする。 けっこう大変だが、このレベルのチームは多い 3.  JUMP :システムを運営する。 膨大な工数が必要。ここに到達すれば安定して強い n  システムを作るときは使ってもらう「仕掛け」と対にして考えて構築しよう。 n  システムを運営する手間:システムを創る手間=7:3だと「覚悟」しよう。 取り扱い手順書作成、部員への周知、トレーニング、メンテナンス等 【AA】まずは来週からでも部室に埋まっている埋蔵金を掘り起こしてみては?
  58. 58. POWERED BY YAMADA 最後に。 n  F-SAEの楽しみ方 n  ものづくりそのもの。無から有を生み出す感動 n  無限に広がっていく人脈 n  この手のイベント、他大学交流(ロボコンには無い) n  擬似企業体験 n  自慢話(学内展示、近所の祭りへ参戦などの広報活動) ※楽しまないと続かないです。大変ですから。。。 ※他の楽しみ方知ってる人居たら教えてください 見過ごされがちですが、この活動がスポンサー様の 善意に支えられている以上、この上なく大切な事です 夢は逃げない、逃げるのはいつも自分だ。 文責:山田

火曜日, 7月 12, 2016

自動車開発での本質へのアプローチ TUT-Formulaの技術開発を思い出しながら。


自動車開発での本質へのアプローチ from Yuya Yamada

  1. 1. 日付 自動車開発での本質へのアプローチ POWERD BY YAMADA
  2. 2. 自動車工学の世界 ✤ 動けばいい、のは100年前の話。 ✤ 感性の世界へ突入したのは50年前 ✤ 膨大な技術の蓄積を土台とした多角的技術
  3. 3. TUT-F技術開発 ✤ 統合的ホイルアライメント技術 ✤ マスバランスマネジメント ✤ クラッシュセーフティー ✤ エルゴノミクス ✤ 吸排気系インピーダンスマッチング 及び環境適合性の追求 ✤ エアロダイナミクス ✤ 統合的先端複合材技術
  4. 4. トレードオフと の戦い ✤ まず、人命を掛ける ✤ ダイナミクスこそ全て ma=μF : aを最大化するのがレーシングカー。 m:イナーシャテンソル μ:friction circle management F:トルクデリバリー、ストッピングパワー、 CF ✤ コスト、車重、安全性、環境性能が aに対して全面的にトレードオフ
  5. 5. 多変量との戦い ✤ 自動車設計はマルチパラメタ ✤ 値ではなく、多次元MAP。写像が重要。 ✤ 非定常問題 (レイテンシ、ゲイン、リニアリティ) ✤ 熱、流体、弾性体、粘弾性体、そして剛体の物 理の知識が前提
  6. 6. 自動車のTDとは ✤ 車両の全体コンセプトを管理 ✤ トレードオフ要件を整理する。 ✤ トレードオフ要件に対して仕様 確定する。 ✤ 設計メンバから迷いを取り除く 。
  7. 7. ビークルダイナミクス ma=μF ✤ a:加速度ベクトル 走る、曲がる、止まる。あらゆる機能における、出力となる aで考えれば過渡応答の問題から解放 ✤ m;慣性テンソル、 平たく言えば、車両重量、ヨー、ロール、ピッチの慣性モーメント 設計的にはマスバランス最適化が課題となる。 ✤ μ;グリップ円、統合的ホイルアライメントで決まる 設計パラメタ ✤ F;駆動力(トルクデリバリー)、制動力、CF 設計パラメタ ✤ aを最大化する上で、m、μ、Fが全部干渉するから車は難しい。
  8. 8. レーシングカーの基本機能 ✤ 基本機能 ✤ 入力;舵角、ペダルストローク ✤ 本当の出力;a ✤ 仮の出力;CF、V、ヨーレート
  9. 9. 自動車開発におけるPSPの例 ✤ トルクデリバリー ✤ 統合的ホイルアライメントテクノロジー ✤ マスバランス最適化
  10. 10. m;イナーシャマネジメント ✤ 要求 ✤ 基本的には軽く作りたい。 ✤ 重心を低くしたい。荷重移動を最小限に抑えたい ✤ 慣性モーメントは限界まで削って、固有振動数稼ぎつつサスをソフトにしたい ✤ でも配置すべきコンポーネントがあるし、予算に限りある。 ✤ 対応 ✤ 設計パラメタは軽量化コスト分配とコンポーネント配置 ✤ 重心と慣性モーメントをパラメタとした線形結合評価関数を作って決めた。重みは車両実験で決定
  11. 11. μ;ホイルアライメント ✤ やりたいこと;タイヤのグリップ円最大化、すなわちトレッド面の面圧積分値最大化、と表面温度管理 ✤ 動的なパラメタ;ヨー、ロール、ピッチ、キャンバー、トー、 ✤ 設計パラメタ;ホイルアライメントジオメトリと動的な剛性、アンチローリング特性、固有振動数 ✤ 基本機能 ✤ 入力 舵角とペダルストローク ✤ 出力 aのリニアリティを最大限に確保しつつ、穏やかにサチらせる。 ✤ 誤差要素 タイヤの動力学、路面幾何学、動的なボディ姿勢、アライメント誤差、ボディ剛性、アライメント精度、車高 誤差
  12. 12. μ;ホイルアライメント ✤ 設計の進め方 ✤ タイヤの仕様決め→タイヤの要求アライメント精度を確定させる。 ✤ ボディの6軸での動きの仕様を決める バネ上の6軸の固有振動数決めて、ダンピングで姿勢変化速度を決めて、狙いのボディ姿勢からアンチローリ ング特性を決めて、 ✤ ボディ姿勢に合わせてトーとキャンバーの動特性を作りこみ、 要求アライメント精度で路面にタイヤを立てる。 ✤ ホイルの動的なアライメント精度がそのままメカニカルグリップと直結。 エアロがあると事情はだいぶ違い、車高誤差がそのまま性能に直結する。 ✤ 加速度とスキール音の周波数特性、サスストロークセンサー、タイヤ表面温度で計測評価する。
  13. 13. トルクデリバリー ✤ 基本機能 ✤ 入力;アクセル開度(ペダルストローク) ✤ 出力;a 加速度(トルク) ✤ 基本機能を乱す要素 ✤ 過渡応答最悪、吸排気系インピーダンスマッチング、回転数特性、エンジンto路面のインピーダン スマッチング
  14. 14. ストッピングパワー ✤ 基本機能 ✤ 入力;ブレーキペダル(インピーダンス特性をどうするかはチューニング次第) ✤ 出力;減速加速度 ✤ 基本機能を乱す要素 ✤ 熱交換、pedal to pod剛性とヒス損、コンタミ、雨、
  15. 15. マフラーのPSP ✤ 機能 ✤ 排気の誘導 ✤ 排気の質量流量最大化 ✤ 排ガス浄化、エミッションコントロール ✤ 排気音低減 ✤ やなこと(設計干渉事項) ✤ かさばる、重い
  16. 16. マフラーのPSP ✤ ビークルダイナミクスma=μF;aを最大化 ✤ F;トルクデリバリーのリニアリティ ✤ トルク=ゲイン*アクセル開度 ✤ ところが、T=α*Aとはならず、T=f(t,ω,A) 要するに、過渡応答、回転数依存がある。
  17. 17. トルクは回転数依存性ある
  18. 18. 設計方針 ✤ トルクを回転数方向に積分した 値を最大化するように設計パラ メタを選んだ。 ✤ パラメタは、管の長さ、太さ、 トポロジ、消音コンセプト ✤ 具体的には4−2−1集合、管 を細長くした。
  19. 19. PSP a最大化 エネルギ回収 ターボ ペルチ ェ 等長マニ 背圧低減 インピーダンスマッチング 独立マニ パイプ式 マニ 抜ける サイレンサ 排気誘導 排気干渉低 減 共鳴過給 慣性過給 流速最大化インピーダンス 境界面管理 音速管理 タコ足 サーモテープ 2重排気管 断面積最適化

月曜日, 1月 27, 2014

排気系(マフラー)の理論/技術基礎について

学生フォーミュラやってた頃に書いた昔の文章です。

目次

1,排気音の支配パラメータ
2,機械要素としてのマフラーの支配パラメータ
3,排気系に求められること一般
4,排気温度のコントロール
5,エキマニと高出力化手法
6,排気系の騒音について
7,その他の技術Tipsとかなんとか
8,素材
9,Formula-SAEにおける排気系設計についての考察

1,排気音の支配パラメータ

  • 音圧
  • 周波数分布
音色というと特定の周波数が強調された音です.
生理的にいい音色は倍音成分を含んだ音だったりします.

2,機械要素としてのマフラーの支配パラメータ

  • 排気温度←耐熱性より材料決定
  • 排気圧←全面的にエンジンをチューニングするなら極限まで落とす必要あり.
    ただし,チューニングレベルによっては落とせばいいという物ではない.
    音圧に対して弱いトレードオフの関係がある.
  • 重量←軽ければ軽いほどいい.強度と剛性に対して強いトレードオフ
加振に対する対策が必要なので強度設計よりも剛性設計が支配的だと思われる.

3,排気系に求められること一般

  • エネルギー回収:ターボ加給,熱電素子など
  • 消音⇔排圧:一般にはトレードオフ
  • 排気の誘導:忘れがちな、最も大事な役目.
  • 強度・剛性・動剛性
  • 耐久性:formulaだとそこそこあれば十分.
振動放射音対策により動剛性が決定される.
静剛性と強度は車両の加減速・コーナリングで
発生する慣性力(体積力)より求められる.

4,排気温度のコントロール

触媒からの要求
もしも触媒を搭載するのならば,
最適動作温度内に置きたいので重要である.
その対策としては
  • 2重排気管の採用←フォーミュラだと無理
  • 断熱材の採用←グラスウールを巻けば放射音対策にも.
  • エンジンの排気口直下に配置
等がある.3番目の方法は独立マニフォールドとトレードオフになる.
また,1次の共鳴加給効果が非現実的な高回転にシフトする.
ただし,2次や3次なら少々期待できる.
競技用車両だと採用は難しい.

騒音面からの要求

200℃下げるとエキゾーストノイズは5~6dB低減されるので
出来るだけ排気温度は下げたい。
方法としては肉厚パイプの採用等がある

排気バルブ直下でのの排気温度の参考値

  • アイドリング:約300~400℃
  • 全開全負荷時:約900℃
やはり,耐熱合金を使用したくなければ
エキマニの冷却を考慮する必要があるだろう.
実用的にはステンレスで十分,
金があればチタンがいいだろう.
エキマニの出口付近のみならばインコネルも有効だが
加工が大変そうだ。

5,エキマニと高出力化手法

集合管はバイクチューニングの神POPヨシムラが何の気なしに開発したことであまりにも有名である.
  1. 等長マニフォールド
    脈動加給効果を狙うには集合部までの音響工学的長さを等しくする。
  2. 独立マニフォールド
    各管長は相互干渉、逆流を防止するためにある程度の長さを確保するといい感じ。
  3. パイプ式マニフォールド
    排気管内部は極力滑らかにし、管内流圧力損失を減らすといいかも。
これら全ての用件を兼ね備えたエキマニを通称「タコ足」という。

6,排気系の騒音について

総論

マフラー【muffler】
  1. 襟巻き
  2. 自動車の排気音や銃の発射音などを消す装置.消音装置.サイレンサー
広辞苑より

排気系からの騒音の分類

排気系からの騒音は以下の2種に大別できる
  1. 排気系吐出音
    1. 排気の脈動圧力波(爆発一次成分)
    2. 気流音(高周波成分)
    1. 排気系表面放射音
    2. 透過音
    3. 排気脈動を加振力とする振動放射成分
脈動圧力波の周波数は一秒間あたりのエンジンの爆発回数であり,エンジン回転数[rpm]×気等数÷60となる.

静音化の大雑把な考え方と手法

  • 可聴周波数から外す
  • 測定部位から外す。邪道だが有効。
  • 吸音

具体的消音原理

吸音
ターゲット
中高周波成分
原理
音圧により細い繊維などを振動させて熱エネルギーに変換する。
吸音材としてはグラスウール,ロービングウール,バサルトウール等がある.
共鳴
ターゲット
100Hz以下の低周波をピンポイントで.
原理
行き止まりの共鳴室(レゾネーター)をマフラー内に設け,排気パイプを接続し,パイプ出口と共鳴室の間を音波が行き来させながら,そのエネルギーを摩擦抵抗によって減衰し,熱エネルギーに変換する.
拡張
ターゲット
全域で効果絶大
原理
排気管断面積の急激な拡大により排ガスを膨張・回折・分散し,マフラー隔壁にぶつけて乱反射させ,減衰させる.

干渉

ターゲット
チューニング次第でどのような周波数もピンポイントで対応可能
原理
メカニカル式
排ガス流路を二股に分岐させ,流路差を与えて再度合流させる.流路差によって生じる位相差を利用して互いの騒音を干渉,消音させる.排気系の取り回しを考えると現実的ではないし,ピンポイントでしか効かない.
電子式
排気音をマイクで拾って音圧と位相を測定しアクティブスピーカーにより同音圧逆相違音波を発生.それを排気ガスにぶつけて干渉させる.
スピーカーの動特性により,対応できる周波数に限界がある.現在の技術では500Hz程度だといわれている.

7,その他の技術Tipsとかなんとか

マフラー内部で排気音を乱反射させよう
スピーカーのエンクロージャーボックスと同じく,チャンバーに対向する平行平面があると定常波が発生するので良くない.究極の理想は球体だがパッケージングと生産性を考えるとあまりに非現実的.せめて楕円形なんてどうだろう.直方体のマフラーなんて動剛性的にも最悪である.
マフラー膨張室において仕切り板に凹凸をつけて消音させることも出来る。

パイプのベンド部の処理

エキパイの曲率がきついところは断面積をそのままか,ちょっと広げた楕円断面にすることで,内部の進行方向に対して直角方向にできる立て渦を低減して損失を減らすことができるのだが,輪切りマフラーかハイドロフォーミングが必要となり現実的ではない.
同じ効果をマフラー内部に板を立てることで発揮することができるが,板の存在による損失増加と立て渦減少による損失現象のどちらが支配的になるのか,実験しないと分からない.たぶん,板にまとわりつく境界層排除厚さ分を補うだけの断面積増加が必要だ.やはり,難しい.

排気系可変装置

現在のところ弁を使用した可変マフラーには下記に挙げるとおりの3種類があるようだ.弁にはバタフライバルブなどを使用し,エンジン回転数やアクセル開度の関数としてオープンループ制御すればよい.
  1. 1) 可変排圧コントロール
  2. 2) 共鳴室と拡張室へ切り替え
  3. 3) 集合方法の切り替え
1はバイクではよくやる手法である.スズキが得意だ.
2は車でよく採用される.例えばタイコ内のパイプ入り口に排圧で作動する弁を設け,低速では拡張室として使っている部屋を高速では膨張室に利用することで,低速での低周波騒音と高速での中高周波騒音を,中高速域での排圧損失を最小にしながら両立させるメカニズムがある.
3の例としてはヤマハのEXUPなどがそうだ.

8,素材

最近の乗用車用排気系の傾向と対策

乗用車では排気パイプにはSUS409(Fe-11%Crのフェライト系)が加工性と応力腐食割れが起きにくいため使用される,が,formulaにはどうでもいい.乗用車マフラーというか正確にはサイレンサー(タイコ)にはSUS430系も使用される.

チタン

耐食性と強度に優れるのでマフラーの構造材としては大変優れた素材である.500℃以上では強度低下.600℃以上では酸化が進むため,エキマニ直下の放熱対策はある程度必要となる.加工性と経済性は悪い.βチタン以外は何でも良さそうだ.

純チタン

純チタンは純度が高い方いと性能がいいかも.必要にして十分な機械的性質を持っている.
もしチタンマフラーをつくりたいなら妥当な材料だ.

αチタン

αチタンは純チタンより耐食性に優れる.まあレーシングカーにはどうでもいいことだ.
また,高温強度やクリープ特性にも優れるため,エキパイにうってつけである.

α+βチタン

α+βチタンは時効熱処理による析出硬化合金である.純チタンやαチタンよりも強度,靭性が高く,加工性にも優れる最強のチタン合金である.溶接性も良いため,これまたエキパイにはうってつけである.しかし少々オーバースペックのきらいがある.余力があれば挑戦したい.

βチタン

βチタンは焼き入れや析出硬化により最も高い強度を誇るが,焼き入れ時の冷却速度を間違えるとぜい化が起こるらしいが,エンジンぶん回して水溜りに突っ込んだらいったいどうなるだろう?
高温強度や対酸化性はそれほど良くないのでマフラーにする意義は特にない.
どちらにせよα+β型とβ型は温度変化の激しい排気バルブ直下だと熱処理も台無しになるかもね.

ニッケル合金

インコネルを代表とするニッケルベースの各種耐熱合金は比重が重いので扱い難い.比強度,比剛性が悪い訳ではないので上手に設計製作すれば軽く作れるが,そんな薄肉パイプを入手できるかどうか.あと色々謎が多くてなんとも.
僕らにとっては色々な意味でオーバースペックである.

ニレジスト(耐食・耐熱鋼)

ステンレスは必要にして十分な機械的性質を持つ.これで十分である.しかし,多少重くなるかもしれない.耐熱鋼も同じく.

鋳鉄・鋳鋼

一昔前の乗用車用エキゾーストマニフォールドは大半がこれだが,どうしても肉厚を落とせないので重すぎる.型を起こすのも面倒くさいし,競技用自動車に使う理由は何一つ無い.

9,Formula-SAEにおける排気系設計についての考察

出力と音響特性の高度な両立,ひいては環境性能と動力性能の妥協無き追求を目指すのが我がチームの最終目標であるため,その方向性は量産乗用車に酷似していると考えられる.
ただ,軽量化に対する要請は量産車の比ではないし,生産手法が全く異なるため,その構造と材質は全く異なるものになることが予想される.
静音設計と低排圧は相反する用件だが,拡張消音の使用を控える事である程度は達成できると考えられる.戦略としては高周波領域を吸音により,低周波域は共鳴によって消音すればよいと思われる.
排気システムの可変装置の有効性はかなり高い,と思うよ俺は.ヤマハ発動機のEXUPのような可変排圧機構もコンパクトで効果が高い.何らかの可変機構はプレゼンテーションでのポイント稼ぎに多少有効かもしれない.
メカニカル干渉消音は重く,かさばるので競技車両に搭載するにはかなりの工夫が必要とされるだろう.排気温度を抑えるには熱交換器を付けるか,パイプの肉厚を増やす必要があるが,重量の増加は免れないだろう.

エキゾーストマニフォールドの設計手法について妄想

エキゾーストマニフォールドの設計スペックはエンジン排気バルブから集合部までの音響長さとパイプ径,集合部形状,集合方法などがある.また,触媒の有無によりその形状は変化するだろう.
パイプ径と音響長さはエンジンが狙うトルクバンドによって決定される.
これは吸気管での共鳴加給効果/慣性加給効果と同じ関係であり,共鳴加給(吸出し)効果のピーク回転数はエキマニの長さを,慣性加給(吸出し)効果の発生回転数はエキマニ直径を決定する.

共鳴加給効果と吸排気管長と集合方法について

排気バルブより吐出された圧力波が集合部に到達する時間を各気筒等しく合わせた排気系を等長エキゾーストマニフォールドという.等長とは実際の長さではなく,音響長さのことである.
集合部を自由端として反射された圧力波は,再び排気バルブ付近へ戻ってくる.そして次の排気サイクル時に排気バルブ近傍に到達した圧力波が負圧波であれば,排気ガスは強制的に吸いだされる.これを脈動(共鳴)加給(吸出し)効果という.音響管長が長ければ到達まで時間がかかるため,低回転域で,短ければ高回転域でその効果を発揮する.また,セッティング次第では高回転域で一往復目(1次),低回転領域で2往復目の圧力波にて慣性加給を行う事もできる.これは4-1集合で顕著に現れるのだが,中速域にトルクの谷ができるため,ドライバビリティーに難がある.対して4-2-1集合にすると自由端となる集合部が2箇所できるため,圧力波は2回到達することになる.その圧力波同士で干渉するためか,脈動加給のピークはハッキリと出ない上にピークも若干落ちるが,中速でのトルクの谷もなくなる.また,爆発間隔が離れた気筒同士を4-2でまとめることによる気筒間干渉低減によりピークパワーの落ち込みはある程度回復させることもできる.
つまり,ピークパワーなら4-1集合が,ドライバビリティーは4-2-1集合が良いことになる.

慣性加給効果と級排気管直径

吸排気管における慣性加給効果とは平たく言えば水力学における水撃作用であり,その効果は流速の一乗のオーダーである.
作動ガスの慣性力によって発生する圧力は適切に設計すれば吸気をシリンダーに押し込んだり,排気をシリンダーから吸いだしたりすることが可能となります.
しかし,ただ単に流速を上げればいいという単純な話ではなく,バルブタイミング,特にオーバーラップと協調したセッティングを必要とします.
流速を上げるには管径を絞ればいいのだが,際限なく絞ろうものなら,ふん詰まりになって流量が裁けないことうけあい.
吸気系の話だがエンジンチューニングの本でポートは広げれば広げるほど良いって書いてある奴がまれにあるけどそれは嘘です.騙されちゃあいけません.実際には流量と流速を両立させなきゃいかんのです.目指すは狙った最大トルク発生回転数で吸気流速をどれだけ音速近くに持っていけるかだ.
というか,むしろ目標最高出力から混合気の必要流量を計算して,その流量を達成できる範囲内で極限までポート系は絞るべきなのだ!
あと,ポート壁面の平滑度と流量の関係はそのうち調べてUPりますね.
最大トルク発生回転数,つまりトルクバンドでシリンダーへの混合気の充填率を最大とするような管径は,管径の細さで獲得した流速による水撃作用の圧力と管径の太さから与えられる流量により決定される.
つまり管径を太くすれば最大充填率を得られる回転数が高回転へシフトし,管径を絞れば低回転へシフトするのです.
ちなみに二輪でのREVやHYPER-VTEC,4輪でのVTEC-E,3stageVTECなど,ホンダが得意とするバルブ休止機構は可変吸気管断面機構であり,慣性加給を全回転数領域で使用するための機構だと言えます.その点はBMWのバルブトロニックやいわゆる普通のVTECに代表される可変バルブストロークとは少々趣が異なるのです.

じゃあ,どうしましょう

要約すれば,パワーバンドを低回転にシフトするには太くて短い吸排気管を,パワーバンドを高回転にシフトするには細長い吸排気管にすればよい事が分かります.
Formula-SAEでは吸気を20mmのリストリクターで絞るため,必然的にトルクバンドを低回転にシフトする必要があります.そのため,吸排気管を最適化すればノーマルと比べ,より細長い形状になると予想されます.ドライバビリティーはもちろんのこと,高出力化のためにもこれは必然です.

建て前と欺瞞を求めて

我らののマシンはクリーンさも売りにしたいので是が非にでも触媒を搭載したいものですが,触媒の温度コントロール,特に始動時のエミッションコントロールのためにエキマニにグラスウールなどの断熱材を巻きつける必要があるかもしれません.そうなるとエキマニの音響長さが実質的に短くなるため,より長いエキマニが必要となり,重量と取り回しの面では不利になるかもしれません.
他方,エンジンの排気音は低く抑える必要があるのでテールエンドでの排気温度は極力下げる必要があります.そのためにはアルミなどの熱拡散率の高い素材を使用する必要があります.排気システムの最下流に位置するサイレンサーはエキゾーストパイプほど耐熱性が要求されない部位であり,前例もありますので,アルミサイレンサーは現実的です.
管の肉厚を適度に厚くすると放熱性は良くなりますが,重量との兼ね合いを考えると得策ではありません.

その他どうでもいいこと

バルブタイミングに手を付けずにECUのセッティングのみでパワーバンドをシフトするとなると,オーバーラップが大きすぎると思いますのでトルクを確保するにはある程度の排圧が必要となるかもしれません.そうなれば拡張消音なども効果的に利用できますのでかなりの低騒音を実現できる可能性があります.
静音性を考えるにあたって,排気系の次に問題となるのは車体の風切り音とドライブチェーンです.音にこだわるならばサイレントチェーンやコッグド・ベルトの採用も視野に入れる必要があります.また,チェーンの騒音は高周波を多く含むため,フルカバードにするだけでかなりの騒音低減が見込めます.選択肢としては普通のチェーンをフルカバーするか,サイレントチェーンです.そのどちらかをトータルでの重量とコストを考えて採用する事になると考えられます.

参考文献

超・クルマはかくしてつくられる 福野礼一郎 二玄社